合唱はやめた方が良い?声楽を勉強中の人が合唱を歌う時に注意すべきポイント!

みなさん、こんにちは!

今日は声楽を勉強している人が合唱を歌う上での注意点についてです!

声楽を勉強していると、何かと合唱を歌う機会が多いと思うんですが、歌のレッスンを受けていると、合唱をやっても良いか迷っている人もいると思います。

声楽をやる理由は人それぞれです。中には合唱が好きで、そこから声楽の勉強を始めた人もいるでしょうし、最初からソリストになるのが目標で声楽を始めた人がいると思います。

あの有名なテノール歌手、ルチアーノパヴァロッティは、歌の勉強を始める前に地元の男声合唱団に所属していました。

お父さんがソリストを務める合唱団に若いパヴァロッティが加入にして、そこで声の才能が認められたんです。そしてそれならチャンスがあるかもしれない、と言う事でお父さんが知り合いの声楽教師であるアリゴ・ポーラの所に息子を見てくれと連れていきました。

パヴァロッティがイタリアのテノールについて語るドキュメンタリー映画があるんですが、その中ではその頃の事について語られています。

このように合唱から始まって、声楽に目覚める人というのは決して少なくないわけですが、歌のレッスンを受け始めてから合唱をやるには、結構注意が必要です。

特に声楽の初心者は、合唱をやるべきかどうか、というのを良く考えないといけません。

今日はどうして注意すべきなのか、その注意点を見ていきましょう。

音域の問題

合唱曲の大きな特徴は、独唱曲に比べて音域が非常に限られていると言う事です。

曲にもよりますが、だいたいソプラノ、アルト、テノール、バスと4つの声部に分かれている事が多いです。

なので、それぞれのパートが歌う音域というのは非常に限られていて、偏っているんです

特に注意が必要なのがテノールです。合唱のテノールではオペラのアリアのように高い音はたくさんでてきませんが、それでもほとんどの場合ドからソぐらいと、比較的高い音ばかりを歌う事になります。

でも、テノールなどパートに関係なく、歌と言うのは必ず下の音、つまり中高音から作っていかないといけないんです。

高い音を歌うためには、その分より沢山の筋力が必要になります。なので、正しい筋肉で歌うという事を身に付けるまでは、高い音というのはあまり沢山歌ってはいけないんです。

正しい筋肉が身につかないで高い音を歌おうとすると、ほぼ間違いなく、別な筋肉を使って歌う事になってしまいます。だいたいは喉を閉めてしまったり、頭声ばかりを意識するようになってしまうんです。

喉をしめると、スペースが狭くなります。実はスペースが狭くなった方が扱いが楽なんです。でもそうすると声というのは成長しないんです。

合唱のテノールパートというのはこういうリスクがものすごく高いんです。

またアルトバスはテノールとは逆に低い音ばかりを歌わせられる機会が多いです。得にアルトは5線の下の音を歌う事が多いですが、そのような音はオペラにはほとんど出てこないです。

実は低い音が響くようになるには、高い音が響くようになるよりももっと時間がかかります。そういう技術が身につかないうちに、低い音ばかり歌わなければならないんです。出そうと思ったって出ませんから、だいたい無意識に音をこもらせて、バスやアルトっぽい音を作ってしまうリスクが高くなります。

階段歌い

また、バスやアルトにはあまりメロディーラインというものが存在せずに、コード進行に合わせた、感情的にはほとんど無意味な跳躍ばかりを歌う事になります。ドファソソドというのはその典型的な音型です。

これは別な動画でも話したんですが、全ての音は、声帯の伸縮で歌われなければならないです。技術的にはポルタメントで歌われなければなりません。2度の跳躍ができるようになったら、だんだんと3度、5度という跳躍ができるようになって、それに慣れてくると、ポルタメントという事が気付かれないぐらい素早く音の跳躍が出来るようになります。

だけどこういう技術が身につかないうちに、このような合唱曲のバスパートのような音型ばかりを歌ってしまうと、音の取り方が階段のようになってしまうんです。

二つの音を全然繋ぐことができなくなってしまいます。

合唱においては、何よりも音程を正確に歌う事が要求されますので、とにかくこの階段歌いが身についてしまう危険性と言うのはかなり高いんです。

声楽というものを階段歌いで感じるようになると、歌うと言う事が難しくなってしまいます。音が高くなればなるほど怖くなってしまいます。もし自分が音の高さを階段ように感じていると思ったら、それは階段歌いに慣れてしまっている証拠ですから気を付けてください。

歌というのは、伸縮によって高さが作られるので、高い音だからといって、音の高さを想像するという事は全くないんです。それは間違った想像なんです。音が高くなればそれだけ引っ張れば良いんです。そしてこの引っ張る動作というのは、2度の伸縮からはじめて、徐々に身に付けるものなので、まったく怖くないんです。

楽譜というのは、どうしても階段のように書いてありますから、高い音は上がってくるという風に感じやすい物なんですが、音の高さを作るというのは、それとはまったく違った感覚なんです。

一日も早くその感覚を身に付ける事が大事ですが、合唱をやってしまうと、音を階段のように考えてしまう癖がつきやすいです。

発声の癖がつきやすい

今話をしたように、声を細くして高い音が出しやすくしたり、無理やりバスやアルトのような声を作ったり、それから階段のように考えたりすることは、合唱で身についてしまう悪い癖です。

これ以外にも合唱を歌っているととにく癖がつきやすいです。

それは合唱では、その人の声を聞いて判断してくれる人がいないからです。発声の勉強においては、間違った時に、すぐにその間違いを正す事が大事です。

間違いと言うのは自分では気づかないんです。特に歌の場合は、自分の声を耳で聴いて判断する事ができませんので、余計に気が付きづらいです。

なので、先生に正してもらう必要というのがあるんです。

合唱では、一人一人がどのような声で歌っているかを判断する事ができませんので、基本的に癖がつきやすいんだという事は頭に入れておきましょう。

声が出せなくなってしまう

さて、これは特に日本の合唱に良く見られる傾向なんですが、日本の合唱というのは、より良いアンサンブルを目指すために、個性を削りに削っていく傾向が強いです。

決して一人だけ目立つような歌い方をしてはいけないんです。隣の人といかに合わせるかという事が大事になります。

これはいかに自分の存在を消せるか、という事になります。アマチュアの合唱団はわかりませんが、コンクールにでるような中高生の合唱部は残念ながらみんなこういう歌い方をしてしまいます。

で、たぶん、日本人の中にはそのようにしてでも、みんなできちんと息のあった演奏をすることができれば喜びを感じてしまう人が多いんだと思います。

でもソリストになるというのは、これとはまったく逆の意識が必要です。オペラは50人の合唱と同じ旋律を歌っていても、自分の声だけ突き抜けるように歌わなければならないんです。合唱にかき消されてしまうようでは、だめなんです。

自分の声を押さえて、隣の人と合った歌い方に喜びを感じるような人では、ソリストには向いていないです。

でも本当はソリストだけでなく、合唱だからと言って、自分を押さえる必要なんて全然ないんですよ。パヴァロッティが所属している合唱団の演奏を聴いてみればわかりますが、みんな結構自分の声をのびのび出して歌っています。カール・リヒターの指揮で歌っていたミュンヘンバッハ合唱団はアマチュアですが、これも結構のびのび歌っています。

自分を決して消すということはないです。それぞれの個性がたくさんあつまるところに合唱の魅力があるんです。一人一人がしっかりと声に感情をのせて歌うから、そこに大きな感動が生まれるんです。

だけど日本ではそれを消して、合わせる事が良いと思われてしまいがちなんです。ここに喜びを感じてしまうと、歌っている人は満足するかもしれませんが、聴いている人には退屈です。ミュンヘンバッハ合唱団のような感動が出てこないんです。

これは日本の合唱独自の音楽観です。自分を消す事に喜びを感じるようになってしまうと、ソリストだろうが合唱だろうが、人に何かを与えることが難しくなります。これは注意が必要です。

おわりに

というわけで、今日は合唱をやる上での注意点を挙げました。

どのように合唱に接していくかというのは、本人が何を目指すかによりますが、声楽を勉強したい、ソリストになりたいというのであれば、発声の技術を学び始めた頃は、あまり合唱では歌わないに越したことはないです。

ただそれでも大学などに入ると何かと合唱を歌う機会というのは増えてしまいます。好きで歌いたい人もいると思います。

そういう場合は、とにかく今日話したような危険性がある事を意識しながら合唱をやるようにしてください。

まずはこのような癖がつきやすいですから、レッスンで余計な癖がついていないか、きちんと確認してもらうようにしてください。

そして大事なのは合唱だからと言って、決して自分を押さえるような歌い方をしない事です。そして自分を押さえる事に喜びを感じないようにしてください。

音楽というのは、感情を人に届ける事なんです。プロであってもアマチュアであっても聴衆とのコミュニケーションが大事なんです。自分を押さえたような歌い方からは、このようなコミュニケーションが生まれることはありません。

声楽家になるためには、人前で歌う心も育てていかないといけないんです。合唱をやる事で心が小さくなってしまう事が一番怖いです。これはその合唱団の指導者によってガラリとかわるでしょうから、全てに当てはまるわけではありませんが、その辺りも良く判断してやってください。

それでは、また別な話でお会いしましょう!


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