声がひっくり返ってしまう原因とその対策は?声がひっくり返るのは決して悪い事じゃない!

こんにちは。

みなさんは人前で歌っていて声がひっくり返ったり割れてしまった事はありますか?そんなに多くはありませんが、本番で声が割れてしまった経験は私にもあります。練習においてはそれこそ頻繁にあります。

歌っていて声がひっくり返るとお客さんも驚きますが、何よりも自分が驚いてしまいますよね。

今回はどうして声がひっくり返ってしまうのかについての話です。

声がひっくり返ってしまう原因

声がひっくり返ったり割れてしまう原因は、簡単です。それは声を出している時の体のバランスが崩れてしまうためです。

高い声を出すのはある意味重量挙げみたいなものです。重いバーベルを頭の上まで持ってくることができれば、声を出すことに成功したと考えてもらえれば良いと思います。音を伸ばすというのは、そのバーベルを頭の上で支え続けるようなものです。でもバーベルを支える筋力が十分でないと、支え続ける事ができずにちょっとよろけてしまいますよね。

実は声がひっくり返るのは、このちょっとよろけてしまった現象と似ています。

高い音を出すことには成功したものの、それを支える筋肉が十分ではないためにバランスが崩れてひっくり返ってしまうというわけです。

バランスを崩す原因とは?

バランスを崩す原因は、声を支えるために必要な筋肉が十分にない事にはすでに触れました。必要な筋肉が十分にないというのは、まだその筋肉が十分に育っていない場合もあれば、その日のコンディションによって疲れていて十分な力を発揮できない場合などもあります。ちなみに必要な筋肉には、声帯を引っ張る筋肉、首の筋肉、横隔膜を支える筋肉など様々な筋肉がありますね。

それらの必要な筋肉が疲れてくると、人間は本能的に別なものに頼ってしまいます。なんとかしてバーベルを落とさなくて済むようにしようとして別な力に頼ろうとするわけです。

最も良く起こるのは舌根を下げて声を支えようとしてしまう事です。または声帯に無理な力を加えて押してしまう事などもあります。

このようにして声を出している途中で別な力が働いてしまうために、ほんのわずかですがバランスが崩れて声がひっくり返ってしまうというわけです。

声は誰でもひっくり返る

声がひっくり返るという現象は、私たちに声を支える筋肉が足りないという事を率直に教えてくれます。筋肉が足りないという事ですから、これは誰にでも起こりえる事なのです。

これは本当ですよ。どんなに技術的に優れたオペラ歌手であっても、その人の限界に達すればバランスを保つことは難しくなります

どんなに高い音が得意な歌手でも、音を半音ずつ高くしていけば必ずいつかは限界に達しますし、1時間か2時間ぶっ続けで歌えば、疲労がたまりバランスを崩してしまいます。このように限界は誰にでも必ずあるのです

特にまだ声楽を勉強中の人は声がひっくり返る頻度が高いですが、それは歌うために必要な筋肉が十分に育っておらず、単に限界点がまだ低いためです。

声がひっくり返る事を恐れてはいけない

さて、声がひっくり返るという事は、このように誰にでも起こる事です。ですから声がひっくり返る事を恐れない事が重要となります

声がひっくり返るという失敗は、最も観客にばれやすい失敗です。まったく事情を知らない観客は時にはそういう失敗を笑ってしまう事もあります。なので歌う人はこうした失敗を極力避けたがります。しかし声がひっくり返る事を恐れると、そうした失敗を隠そうとするあまり、最初から声帯を力で押してしまうという事がよくあります。人前で声がひっくり返るくらいなら、そうならないように最初から別な力に頼って声を出そうとするわけです。このような声の出し方をすると声がひっくり返るリスクは減りますが、歌うために本当に必要な筋肉を使う事ができないので、いつまでたっても声が成長することはありません

声を押してしまうという事は、一般の観客にはばれないかもしれませんが、長い歌手人生において最も大きな失敗を犯してしまう事になります。

歌う人にとって声がひっくり返るというのは精神的に結構ショックなものです。でもそれは私たちに起こりうる失敗の中では最も正直な失敗です。このような失敗は成長する上では欠かせませんから、とにかく必要以上に恐れたり、自分に筋力がないことをごまかそうとしない事が大事です。

練習で声がひっくり返ってしまったらどうするか?

では練習で声がひっくりかえってしまったらどうするのが良いのでしょうか?まずは声がひっくり返るという事は、とりあえずその音を一瞬でも出すことには成功しているわけですね。しかしそれを保つことができずに途中でバランスを崩してしまっているというわけです。

先にも言いましたが、バランスを崩す瞬間には、それを避けようと思って瞬間的に何かしら無理な力が加わっている可能性が高いです。だいたいは声帯を押してしまったり、舌根を下げてしまうかのどれかです。これはバランスが崩れた瞬間に、どうにかしてバランスを取ろうとするからなんです。バランスを崩した瞬間に本能的に手すりに手を伸ばすような状況に似ているかもしれません。

これらはほんの一瞬の出来事なので中々気が付きづらいですが、まずはその瞬間にどのような変化こっているのかを冷静にチェックしましょう。

舌が奥に行ってしまったなどの原因を突き止めたら、後は音が出てからできるだけ変化させないように気をつけて歌うだけです。また横隔膜の支えに意識を集中させる事で、不要な力が働きかけるリスクを減らす事が出来ます。

これだけで声がひっくり返る原因を大分取り除くことが出来ます。本当の所、声を出した後で声を押したり、舌を押し下げたりという“変化“をさせなければ、声がひっくり返ったり、割れたりすることはまずありません。支えられる筋肉がなくなったら、最終的には息混じりの声になって、音がでなくなるか、音程が下がってしまうだけです。

ただ筋力の限界がきてバランスを崩した瞬間に、別な力に頼らないというのは本当に難しいです。人間は本能的に、どうしてもバランスを崩した瞬間に手すりにつかまりたくなりますからね。でも手すりにつかまってはだめです。あきらめて落っこちましょう。

練習では別な力に頼ってごまかさない事が大事になります。腕立て伏せでも腹筋でも、筋トレには一番効果的なやり方というのがありますよね。反動や変な勢いをつけて筋トレをしてもあんまり効果がないのは、歌の練習でも同じです。

本番で声がひっくり返ってしまったら?

練習だったらまだ良いですが、本番で声がひっくり返ってしまったらショックですよね。こういう時はどうしたら良いでしょうか?

音楽というのは決して後戻りできませんから、本番中はさっさとその事を忘れて先の事に集中するべきです。いつまでも過ぎた事を考えるのが一番良くありません。どんなに考えてもその音を修正する事は不可能ですから。

本番が終わったら、一応何が原因でバランスが崩れたのかを冷静に見直しましょう。もしかしたら体調が悪かったのかもしれませんし、演技している時に激しく動きすぎて息が上がっていた、という事もあるでしょう。公演続きでフォームが崩れていたり疲労が溜まっているという場合もあります。

しかしあまりその事に捉われすぎるのは禁物です。捉われすぎると恐怖心が芽生えてしまうからです。一度芽生えた恐怖心を拭い去るのは決して簡単ではありません。公演でひっくり返った個所が近づいてくるたびに、毎回不安になってしまいます。

そうなると本当に不安との戦いとなります。こうなるともはや演奏を楽しむどころではなくなってしまいますし、立ち直るのに結構な時間を要します・・。

おわりに

最近Youtubeでいろいろな歌手の歌を検索していたら、有名なオペラ歌手のこうした失敗ばかりを集めたビデオが数多く存在する事に気が付きました。

誰がどのようなつもりでこのようなビデオをアップしているのかは知る由もありませんが、オペラの中には技術的に人間の限界と戦わなければならない場面が数多く存在しています。なので、時にはその壁に打ち砕かれてしまう事もあります。くどいかもしれませんがこれは誰にでも起こりうることなのです。

まあそのようなビデオを見ていて、声がひっくり返ると言う事について一つ話をしてみようと思ったわけです。

声がひっくり返ると言う事は私たちに自分の限界を率直に教えてくれます。ショックもありますが、私たちはそれを素直に受け入れ、やるべきトレーニングを続けることで必ず自分の限界を超えていくことが出来ます。あの大歌手だって、大舞台で声が割れたりひっくり返ったりしています。なので私たちが必要以上に気にする必要はありません。自分を信じて練習を頑張りましょう!


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