発声練習は単なるウォーミングアップではない!発声練習の正しい目的と意義を理解しよう!【声楽・オペラ】

みなさん、こんにちは。

みなさんは歌う前に発声練習をしていますか?私は歌を習い始めてから発声練習を欠かしたことは一度もありません。

でもかれこれ20年以上も歌ってきたわけなのですが、そんな発声練習の本当の意味が分かってきたのは実は最近の事です。

今回は発声練習の目的と意義についてお話します!!

発声練習の目的は?

では発声練習の目的を見ていきましょう。発声練習の目的は大きく分けて二つあります。

①機能を学ぶ

まず、発声練習の目的の一つは、発声練習を通して機能をしっかりと学ぶというものです。歌を学び始めたばかりの人は、歌うために必要な様々な筋肉がありませんので、体がまだきちんと機能しません

なので、様々な練習を通して体の様々な感覚を身に着ける必要があります。こうした機能を学ぶ練習は実に様々です。思いつく限りでも、割り箸を奥歯に挟んで歌ったり、時には口をまったく開けないで歌ったり、また手で舌を引っ張って歌ってみたり、それから寝ころんで歌ってみたりなどといろいろあります。

これらの練習の目的は最終的に歌う上で正しい機能を身に着ける事です。なのでその時どのような練習をする必要があるかは、歌う人のその時の状態によって変わります。これには対処療法みたいな側面がありますね。

たとえば歌っている時に舌根が奥に行ってしまいやすい人には、舌を前に出す、もしくは自分で引っ張って歌う事が非常に有効です。そうする事で舌が奥に行く事を防ぐことができるからです。このような状態を作る練習をする事で、初めて本当に歌う上で必要な部分だけ使うという事を覚えるようになります。

また喉を押して声を出す癖がある人には、下あごをあげて(上を向いて)歌う事も効果的です。こうする事で声を押しづらい状況を作り出すことが可能となります。

他にもいろいろとありますが、歌を歌う人には必ず、何かしらの癖が備わっています。それは別な記事でも話してありますが、私たちが普段話している言葉(言語)の影響を大きく受けているためです。

歌がうまくなるためには、そのような癖を取り除きながら、歌う上で本当に必要な機能(体をどのように動かしていくか)を学んでいかなければならないのです

癖を取り除かない事には、歌の上達は決してあり得ません。最初の3年ぐらいは癖を抱えたままでもその癖を抱えたまま上達しますが、ある時上達がストップします。後は癖を抱えたまま、おかしいと思いながらもそれをごまかしながら歌っていくか、それが嫌なら気合を入れて癖を直すしかありません。もちろんこうした癖に本人が全く気がつかないという場合もあります・・・。

なので私たちは様々な発声練習を通して、歌を歌う上で本当に必要な機能を身に着けていかなければならないのです。ただこれの難しい点は、いつまでも同じ練習を繰り返してはダメだという点です。

私達の体の状態は常に変化しています。今は口を閉じて歌うのが最適だったからといって、これを半年続けると、口を閉じて歌う事によって間違った癖が付く可能性もあるわけです(つまりやりすぎな状態)。自分のその時の問題や課題をしっかりと把握した上で、その時の状態にあった最適な練習をいろんな角度からしていかなければなりません。

これは大理石で彫刻を彫るような作業に似ているかもしれません。こっちを削ったら別な場所を削って・・というように様々な方面から少しずつ形を整えていかなければならないのです。ずっと同じ場所だけ削っていると取り返しのつかない事になってしまいます・・・。

私のコーチはこうした作業の事をMehrfrontenkrieg(メアフロンテンクリーク)と冗談交じりに呼んでいます。メアフロンテンクリークとは、いくつもの戦線をかかえた戦争の事です。前方ばかりに集中すると後方から敵がやって来ますから、戦力をすべての戦線にバランスよく配置しなければならないというわけです。

つまり同じ練習ばかりやっていると、変な癖がついたり、別なところがおろそかになってしまうという事ですね。

発声練習の大きな目的の一つは様々な練習を通して歌う上に必要な機能を学ぶ事なのです

必要な筋力を身に着ける事

発声練習のもう一つの大きな目的の一つは、歌うために必要な筋肉を鍛える事です。世間では筋肉を鍛える事を筋トレと言いますが、発声練習も筋トレと同じです。

高い音を出すためには、息を支えるための呼吸が不可欠になります。そのためには横隔膜の筋肉、それから呼吸を支える腹横筋や腹筋を文字通り鍛えなければなりません。それと同時に声帯を引っ張るために首の引っ張る筋肉も鍛えなければなりません。鍛えなければならない筋肉というのはいろいろとあります。

様々な発声練習を通して、横隔膜や腹横筋などの筋肉の機能(動かし方)、それから首の筋肉の引っ張り方が分かってきたら、次に正しいやり方でその筋肉を少しずつ鍛えていかなければならないというわけです。この練習を通して、より高い音に必要な筋肉や長いオペラを通して歌うのに必要な筋力を鍛えていきます。

この練習のポイントは、必ず限界付近まで筋肉を追い込まなければいけないという点です。筋肉は負荷を与える事でしか成長しないからです。

例えば今日は高いド(ハイC)が3回しか歌えなかったとしましょう。これが今のあなたの筋肉の限界です。次の日は疲れがたまっていて休んだ方が良いかもしれませんが、その次の日には4回できるようになるでしょう。またその次の日は疲れてしまうかもしれませんが、さらにその次には5回できるようになるかもしれません。

でも毎日3回しか練習しなければ、それ以上筋肉が育つことは期待できません。なのでこの練習は必ず限界付近までやらなければならないのです。

このようにして筋肉に負荷を与える事で、筋肉は必ず育っていきます。

発声練習でなく、曲の練習をする事でも歌うために必要な筋肉は鍛えられますから、発声練習だけで筋肉を追い込む必要はありませんが(発声練習だけで追い込んだら疲れて曲が歌えなくなる・・)、発声練習にはこのような目的があると言う事をしっかりと理解する事が大事です。

注意点!

ただ筋トレとしての発声にはいくつかリスクが伴います。

一つは限界の見極めがなかなか難しいという点です。やりすぎると次の日疲れが残って歌えなくなってしまいます。そういう場合は決して無理をしないで、筋肉を回復させる必要があります。

1日、2日休めば回復しますから焦る必要はありません。筋肉を成長させるために筋肉を追い込んだと思ってまた頑張りましょう。

私の理想は6日間練習をして1日休養する事です。6日続けて練習して疲れが溜まってくるぐらいがストレスがなくて丁度良い練習量です。まったく疲れを感じなければそれは追い込めていない証拠ですから、負荷が軽すぎると言う事ですね。

また私は高い負荷をかけて1日おきに練習するという方法を数週間ためした事もありますが、疲れて歌えない日が増えすぎても変なストレスが溜まってしまいます。この辺は自分にあった練習を試す必要がありますね。

疲れるまでやったら、必ず休むことが大事ですね。疲れているのに無理して歌うと言う事はオーバーワークなので、絶対にやらないようにしましょう。

さて、もう一つのリスクは、間違った方法でやってしまうと筋肉ではなくて声(声帯)を疲労させてしまう事です。なので筋トレとしての発声練習は、ある程度体の使い方(機能)が分かってきてから、という事になります。ジムでもハードなウエイトトレーニングを一人でやると危険ですよね。必ずトレーナーや補助の人が付いています。歌の場合も先生と一緒、もしくは定期的にレッスンに通える環境を用意し、何かおかしな事があってもすぐに対処できるようにすることが大事です。

プロの歌手でも発声練習が必要な理由は、それは筋肉というのは使い続けていないと怠けて衰えてしまうからです。多くのスポーツ選手がアスリートレベルを保つために日ごろからのトレーニングが必要になるのと一緒です。

ウォーミングアップとしての発声練習?

では今度はウォーミングアップとしての発声練習について見ていきましょう!

私の認識では、一般的には世間では発声練習=ウォーミングアップと思われているのではないかと思います。

これは決して間違ってはいませんが、的を射ているわけでもないです。

実際に歌う曲によってはウォーミングアップとしての発声練習が必要な時もあります。例えばオペラの冒頭でいきなり強い声で歌わなければならなかったり、高い音を歌わなければならない場合は、歌うために必要な筋肉を適度に温めておいた方が良いです。それから普段あまり歌いなれていないものを歌う時も事前にウォーミングアップをする必要もあるでしょう。

でもそうした場合を除いては、特にウォーミングアップというのは必要ではないです。そこまでハードな出だしを要求する曲というのも多くはありません。オペラは長いですから、歌っている間にちゃんと声も体もだんだん温まってきます。なによりも最後までしっかりした声を保つことが大事です。

きちんとした技術があれば、特別なオペラを除いてはウォーミングアップというものをしなくても歌えるようになります。リサイタルなどで何曲も歌う場合は、あまりハードな曲から始めずに、曲を歌っている間に徐々に温まってくるような選曲をすれば良いです。

ではどうしてみんなウォーミングアップとしての発声練習をするのでしょうか?

実は何かを歌う前に発声練習が必要というのは、単なる気持ちの問題である事の方が多いのです。歌うというのは心が大きく関係しています。歌う気分が盛り上がらないと声というのはなかなか出てきません。

なので多くの合唱団や声楽のレッスンでは気分を盛り上げるために発声練習が用いられている事が多いです。

たしかに発声練習をしている間に気分が盛り上がって来て、徐々に声が出るようになってきます。でもそれは発声練習をして筋肉が温まったから声が出るようになったわけではないのです。これは発声練習という行為を通して徐々に日常の仕事モードや勉強モードから歌うというモードに気分が切り替わっているだけなのです。声なんてものは酒を飲んだ次の日の朝とかでなければ、だいたいいつでも出ますから、わざわざウォーミングアップをする必要はありません。

まあでもこれで声が出るようになるのだから、それはそれで良いではないか、と思うかもしれませんが、プロになりたい人は注意が必要です。これを続けているとウォーミングアップが習慣化してしまい、それなしで歌う事に対して不安になってしまう事があるからです。

でも現実はいつでも発声できる環境が整っているわけではありません。特にオーディションなどではウォーミングアップできる部屋がない所もありますし、あったとしても時間が少ない事は決して珍しくないのです。そうなると、今日は発声練習が十分にできなかった・・・本番でうまく歌えるだろうか・・などと絶えず悩む事になってしまいます。

プロの歌手の中にも、ウォーミングアップにやたらと神経質な歌手もいます。せっかくプロになるだけの技術があるのに、舞台に出る直前まで何度も楽屋で声を出してぎりぎりまでチェックしていないと安心できないのです。まあそれにはその人の性格も関係しますが・・・。

おわりに

今日は発声練習についての話でした。

発声練習の大きな目的は、様々な練習を通して歌う上での機能を学ぶ事、そして練習を通して筋肉を鍛えていく事です。

それぞれの練習の意味を知る事で効果的に練習する事が可能となり、上達、成長ににつながります。こうした目的が分かれば、それをウォーミングアップとして利用する事ももちろん可能です。

でもこうした目的を何も考えずにただウォ―ミングアップとして発声練習をしても、上達するかどうかという点においてはあんまり意味はありません。そうした発声練習はあくまで気分の問題なのです(もちろん気分を盛り上げるも大事ですが・・。)。

もし、今まで発声練習=ウォーミングアップだと思っていたとしたら、ぜひともその練習にはどのような筋肉を鍛える意味があるのか、どのような体の使い方を学ぶ事ができる練習なのかを良く考えてみてください。

一つ一つの練習の意味をしっかり理解する事が上達への一歩です!!

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