【オペラ・声楽】ポルタメントとは?ポルタメントの重要性とその意義について解説!!!

こんにちは。

今回は声楽の発声において最も重要な技術の一つであるポルタメントについて解説していきます!!

ポルタメントとは?

まずは、ポルタメントという言葉についてざっと説明していきましょう。

ポルタメントとは、二つの音高の間を、その変わり目が意識できないように滑らかにつないで段階的にスライドする演奏法の事を意味します。

ポイントは、二つの音が移行する際に音の変わり目が分からないという点で、これは声楽トロンボーン、もしくはヴァイオリンなどの弦楽器でないとできない特別な演奏技法になります。

言葉にするとややこしく感じるかもしれませんが、実際に聴いてみればすぐに分りますので、まずはイタリア人テノール、べニアミーノ・ジーリの演奏を聴いてみてください。

この曲はファの音からシ♭に下降する音型で始まりますが、ジーリが最初の二つの音を滑らかにスライドさせながら歌っている事にお気づきでしょうか?これがポルタメントです。

楽譜上ではファとシ♭しかありませんが、いきなりファからシ♭に移動するのではなく、その間にある音(ミ、レ、ド等)を素早く通過しながら移動していますね。

ピアノでこの二つの音を演奏しようと思うとファの音とシ♭の音二つしか出せませんが、歌手はこのポルタメントを用いる事で、二つの音を滑らかにつないで演奏する事が出来ます。

実はこれは声楽においては非常に重要なテクニックになります。ではどうしてポルタメントが重要なのか、そしてどのようにしてポルタメントをやれば良いのかを見ていきましょう!

ポルタメントは発声の基本中の基本

ポルタメントは発声のテクニックの中でも最も重要なものの一つです。良い歌い方の基本は、二つの音をどれだけ滑らかにつなぎ合わせて歌うか、という事にあります。

2つの音を切れ目なく結ぶ、そしてそこから3つ、4つと繋がっていく事でフレーズが出来てきます。すべての音をきれいに結ぶ事が出来ることをレガートで歌うと言ったりしますが、レガートで歌う事は私達声楽家にとっては最も重要な音楽的要素の一つになります。

どんなに言葉を大事にして歌っても、音と音がつながっていなければ、きれいなフレーズを聴衆に聴かせることはできません。すべての音楽的な表現の一番基礎の部分にあたるのがこのレガートなのです。

さてレガートで歌うためには、まずは二つの音を切れ目なく、滑らかに歌う必要があります。そこで必要なテクニックがポルタメントなのです。

どのようにして音程を変えて歌うか?

ではどのようにして異なる高さの音を繋いで歌うのかを見ていきましょう。

まずはあんまり音程が広くない全音(ド~レ、レ~ミ)を例にして考えてみます。

ドの音からレの音まで音を一つ高くするにはどのようにしたら良いでしょうか。正しいやり方は声帯を引っ張る事です。ドの音から歌い始めて声帯を徐々に引っ張っていく事で少しずつ音が高くなっていきます。そして徐々にレの音に到達します。

バイオリンやギターの弦の調律をイメージしてみてください。糸巻をぐるぐると巻くと音が少しずつ高くなっていきますよね。そして徐々に目的の音に達します。

声帯の伸縮もこの糸巻きのイメージと似ています。声帯が徐々に引っ張られる事によってより高い音を出す事が可能となり、逆に緩める事によって低い音を出すことが可能となるのです(あくまで感覚的なイメージです)。

そしてその時、この二つの音の間には決して隔たりがありません。糸巻を考えてもらえばわかると思いますが、スムーズに音が変わりますね。これは発声おいても最も自然な動きなのです

音程は声帯の伸縮によって変える事になります。声帯の伸縮というのは、決してピアノの鍵盤のように段階的に行われる事はありません。ドの音からソの音まで声帯を引っ張って伸ばす時も必ずその間の音(レ、ミ、ファの音)を通過しています。ゴムを引っ張って伸ばす動きとも似ていますね。(実際に輪ゴムを引っ張って弾いてみるとより高い音が出ます。)

私たちはすべての音をこのように繋いで歌わなければならないのです。だからポルタメントは基本中の基本のテクニックなのです。

実際の所、優れたオペラ歌手はこの動きを、一瞬でやっていますので、音がスライドしているようには聞こえませんが、厳密に言えば必ずその間の音をスライドしています。

これをゆっくりと観客に聞こえるぐらいのスピードでやったのがポルタメントという演奏技法になります。違いはスピードだけであって、声帯が伸縮するという点では同じです。

ではどうすれば声帯を伸縮させることができるのか?

声帯を伸縮させて歌う事がポルタメントである事に触れましたが、ではどうすれば声帯を伸縮させることができるのかを見ていきましょう。

声帯を伸縮させるためには喉頭(喉仏)を下げる必要があります。

上の図の黄色い部分は私たちが喉仏と呼んでいる部分ですが、甲状軟骨という名前が付いています。実はこの部分が前方に倒れるような動きをするのです。この動作の事を喉を下げる、という言い方をしたりします。

この甲状軟骨が前に倒れるとそれに伴い声帯も引っ張られます

つまり声帯を引っ張るためには、甲状軟骨を前に倒してあげる必要があるのです。一般的に喉を下げるという動きがこれの事です。

ではどのようにして喉を下げるのか、という事ですが、そのためには首の筋肉を引っ張る事が重要となります。喉は舌ともつながっているので舌根を下げて歌う人が大勢いますが、これは間違いです。舌根を下げてしまうと歌うために必要なスペースが狭くなってしまうためです。

そのために舌根ではなくて首の筋肉を使う必要が出てくるわけです。これについては別な記事で詳しく触れているのでそちらをご覧ください。

ポルタメントの練習の仕方は?

たいていの人は、初めのうちは声帯を伸縮させて音程を変えるという動きに慣れていません。私たちがこうした技術を知らずに歌おうと思ったら、ほとんどの人は声帯を横から押して無理やり音を高くしてしまいます(本来伸びるはずの声帯を横から力を加える事によって縮めて無理やり高い音を出す)。この時に喉が高くなってしまう人も多いですね。

なので、この声帯を伸ばして歌うという技術は、これまでの歌い方とは違うという事をしっかりと意識して練習していく必要があります。これまでの歌い方とこの声帯を伸縮させる歌い方が全く別物である事を頭でも体でも覚えていかなければならないのです!

ポルタメントの練習では、まずは力を加えずに、ゆっくりと喉を下ろしながら声帯を引っ張っていきます。最初は半音や全音からこれを練習していきます。

最初のうちは喉を下すための首の筋肉がありませんから、この半音や全音をスムーズに移行するのにも時間がかかるはずです。大事なのは力ではなく声帯の伸縮によって音程を変える事です。

首の筋肉を引っ張る事によって、喉を下げ、声帯を引っ張っていくという動きになりますが、これらの筋肉によって音程を変えていく事を少しずつ練習して身に着けていかなければならないのです。

声帯を引っ張る前に声を出そうとすると、それは力に頼った押した声という事になります。

なのであせりは禁物です。最初は半音からそして徐々に音程を広げて練習していきます。正しい練習をしていれば、3か月ぐらいで4度、5度の音程もポルタメントで歌えるようになってきます。そして一年後が二年後には必要な筋肉も育ち、オクターブを自由に行き来する事ができるようになります。

長い道のりですが、これをやる事によってはじめてどんな音程も無理なく自然で美しいレガートが可能となるのです!!

声帯を伸縮する歌い方のイメージをつかもう。

この技術を最も自然で美しくやって演奏していた歌手の一人がテノール歌手のフランコ・ボニソッリになります。

ポンキエッリのオペラ「ジョコンダ」より有名なアリア“Cielo e mar”の冒頭を聴いてください。

赤丸で囲んだ所でボニソッリがポルタメントをしていますね。この歌い方が声帯を伸ばす動きによってできる正真正銘のポルタメントです。ぜひこの音の響きを耳で覚えてください!

良い歌手の歌を聴くときは、ただ歌いまわしを聴くだけでなく、どのように体を使うからそのような声が出ているのかという部分を聴くのが重要になります。

このブログではそういう目的で大歌手をたくさん紹介していますから、ぜひとも合わせてご覧くださいね。

おわりに:ポルタメントの注意点

今回はポルタメントの重要性についての話でした。

ポルタメントは発声における基本的で非常に重要なテクニックです。しかしポルタメントを多用すると音楽的には間違いになってしまう事もありますから、そこは注意しなければなりません。

モーツァルトやヴァーグナーなどでこのようなポルタメントを多用してしまったら、すぐに指揮者に指摘されてしまいます。

でも基本的には声帯の伸縮という動きは何を歌おうが同じです。ポルタメントが必要でない場合は、ポルタメントでゆっくりやっていた伸縮の動きを、間の音が聞こえないようを一瞬で、もしくは素早くやるだけです。

それにはまたそのためのトレーニングも必要になりますが、それはまた別な機会という事にしましょう。

では今日はこの辺で。


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