メッサ・ディ・ヴォーチェとは?メッサ・ディ・ヴォーチェのやり方とその意義を解説!【オペラ・声楽の発声】

皆さん!こんにちは!


皆さんはメッサ・ディ・ヴォーチェと言う言葉は聞いたことがあるでしょうか?

これまで声楽に触れたことがある人にとっては、結構お馴染みの言葉なのではないかと思います。

一般的にはできるだけ小さい声で歌いだし、徐々に声を大きくしていき、そこからまた声を徐々に小さくしていって終わる、といった発声におけるテクニックの一つとして認識されていると思います。

今回はこのメッサ・ディ・ヴォーチェについてもう少し詳しく見ていきましょう!

メッサ・ディ・ヴォーチェとは Messa di voce

メッサ・ディ・ヴォーチェはイタリア語の“Messa di voce”の事ですが、言葉そのものの意味は「声を置くこと(※ニューグローブ音楽大辞典)」とされています。

しかし冒頭でも触れたとおり声楽においては、これは単に「声を置くこと」という意味ではなく、テクニックの一つとして広く認識されていますね!

日本では、声楽の初心者の多くがコンコーネ50番サルバトーレ・マルケージなどの練習本でテクニックを学び始めますが、その中でも最初の方に登場するのがこのメッサ・ディ・ヴォーチェのテクニックです。

試しにサルバトーレ・マルケージの練習曲集Op.15の第1曲目を見てみましょう。

この練習曲集では、1曲目の課題がなんと“Messa di voce“となっています。赤枠で囲みましたが、この練習曲では、音を伸ばしながら徐々にクレッシェンドして、さらにデクレッシェンドしていくという技術の練習が目的となっています。

マルケージよりもさらに馴染みが深いコンコーネ50番も見てみましょう。

コンコーネ50番においては曲ごとに題名はついていませんが、2曲目で一つの音を伸ばしている間にクレッシェンドをしてから徐々にデクレッシェンドをしていくという課題が科せられています。ちなみにこの曲は私が声楽のレッスンを受けてから最初に歌った曲になります。

ジュゼッペ

私も高校生の時にコンコーネ50番から勉強を始めました!

このように声楽を学ぶ人の多くは最初の段階でメッサ・ディ・ヴォーチェというものに一度は触れることになります。

例で示したように楽譜を見ればメッサ・ディ・ヴォ―チェとは何なのかだいたいのイメージを掴むことができると思いますが、簡単に言うと、音を伸ばしている間にクレッシェンドしてからデクレッシェンドする技術の事を言います。

ただしこれは大きな声から歌いだしては意味がありません。できるだけ小さな音(ほぼ無音の状態)から歌い出し、その後クレッシェンドし、ある一定の大きさになったらふたたびデクレッシェンドして最後は自然に消えていくように歌わなければなりません。

しかしこれは言葉で言うのは簡単ですが、やるのは難しい!それについて詳しく見ていきましょう!

メッサ・ディ・ヴォ―チェは実は超高等テクニック!

メッサ・ディ・ヴォ―チェは練習曲の最初にでてきますから、初心者にもできる簡単なテクニックだと思うかもしれませんが、実はこれは声楽のテクニックの中でも超高等テクニックに入ります。

この技術の習得にはとにかく年月と忍耐力が必要です。プロの歌手でもこの技術を完全に習得している人は少ないです。これを書いている私も、現在毎日メッサ・ディ・ヴォ―チェを練習しています。

何をもって完璧とするかにもよりますが、とにかく音が高くなればなるほど難易度が上がります。オペラに出てくる最高音でもメッサ・ディ・ヴォ―チェができれば完璧に近いテクニックと言えるでしょうが、これは中々ハードルが高いです。

まずは何が難しいのか見ていきましょう!

①小さい声で歌い出すのは最初は難しい。

まずは小さい声で歌い出すのは、最初のうちは結構難しいです。何もない無音の状態(息)から隔たりなく音にしていかなければなりません。ちなみに小さい声とは決して裏声(ファルセット)ではないので誤解しないでください!

そのためには歌い始める前から体の準備ができていないといけません声を支えるための筋肉を歌う前にしっかりと緊張状態にしておかなければならないというわけです。

でも小さい声で歌おうとするとどうしてもそれらの筋肉が緩んでしまいます。最初のうちは声と体の関係がまだつかめていないので、これが難しいんです!

ヨゼフ

ピアノで歌うのは本当に難しいよ。フォルテで歌った方が勢いがついた分確かに楽に感じるね。

②スムーズにクレッシェンドするのは最初は難しい!

小さな声で歌い出す事に成功したら、今度はそこからクレッシェンドしなければなりません。ポイントは決して小さい声から大きな声にする間に、音色が変わらないようにすることです。

大きな声を出そうとすると、どうしても声帯に余分な力が加わってしまいます。そうすると小さい声から急に大きな声に変わってしまいます。これだと音色も変わってしまいます。無段階でクレッシェンドするためには、横隔膜の呼吸の支えだけで、声帯には力を加えない事が大事です。

決して声帯に無駄な力を加えてクレッシェンドをしてはならないのです。よく“押してはならない“という言い方をしますが、クレシェンドするのに必要な横隔膜の筋肉が育つまでは、大きくしようとして声押してしまう危険性が高いんですね

③スムーズにデクレッシェンドするのはもっと難しい

さてクレッシェンドする事に成功したら、そこから徐々にデクレッシェンドする事になります。

これはクレッシェンドするよりも難易度が上がります。というのもデクレッシェンドするには、クレッシェンドする時よりももっと大きな支えが必要となるからです。

しかし声を弱くしようと思うと、自然とそれを支える筋肉も緩んでしまいます。なので支えきれずに途中で声が裏返ったりすることが良く起こります。

デクレッシェンドするにはより筋肉をしっかりとコントロールしなければならないのです!

対処法:メッサ・ディ・ヴォ―チェの本当の意味に答えが!

さて、メッサ・ディ・ヴォ―チェの技術が高等テクニックであることはなんとなく理解できたと思いますが、ではどうすれば習得できるでしょうか?

そのカギはメッサ・ディ・ヴォ―チェの本当の意味を知る事にあります。最初にメッサ・ディ・ヴォ―チェの本来の意味が「声を置くこと」だという事には触れましたね。

これはどういう事なのか見ていきましょう。

イタリア人のテノール歌手、ルチアーノ・パヴァロッティはベルカントについてのドキュメンタリーにおいて、同僚のマリリン・ホーンに“ある有名なイタリア人のメゾソプラノ歌手がメッサ・ディ・ヴォ―チェというテクニックはイタリアには存在しないと言っていたけれど本当か?“と質問されて、彼女の言う通りだよ。メッサ・ディ・ヴォ―チェは単に声のポジションの事だよ。と答えています。

声を置くこと」というとちょっとイメージしづらいかもしれませんが、パヴァロッティの言うように「声のポジション」として考えるともう少し分かりやすいかもしれませんね。

メッサ・ディ・ヴォ―チェを語る上ではこの声のポジションを理解する事が非常に大事になります。

声のポジション

小さな声から歌い始めてクレッシェンドし、デクレッシェンドすると言ってきましたが、実はこれを可能にするためには、歌う上で、声が正しいポジションにある事、そしてそのポジションをキープできる事が前提となります。

高等テクニックのメッサ・ディ・ヴォーチェも、声の正しいポジションを確保し、そのポジションをキープする事ができれば、劇的に簡単になります

逆に、正しいポジションを確保する事なしに、メッサ・ディ・ヴォ―チェのテクニックを身に着けることはできないと言う事も出来るでしょう。

声の正しいポジションとは、簡単に言ってしまえば、喉が十分に開いて下がった位置にある事です。喉の下げ方については別な記事で詳しく触れていますので、ここでの説明は省略します。まだご覧になっていない方はぜひそちらもご覧ください!

正しい喉のポジションをキープするには?

さて、喉を下げて正しいポジションを確保できたら、今度はそのポジションをキープする方法を学ばなければなりません

キープするというのは、歌っている間、喉の位置が上がったり、スペースが狭くなったりと変化しないようにする事です

つまりクレッシェンドやデクレッシェンドをやっている間にもそのポジションが変わらないようにすると言う事ですね。

ポジションをキープするために最も重要なのが、先に説明した、喉を下げるために必要な首の周りの筋肉を使う事、それから呼吸を支えるための筋肉をしっかり使う事、そして舌が邪魔しないようにする事の3つになります。

これを実践する事で、音域、音の強弱に関係なく喉の位置をキープできるようになっていきます

後の二つについても別な記事で説明していますので、ぜひご覧ください。

メッサ・ディ・ヴォーチェの意義

パヴァロッティもイタリアにはメッサ・ディ・ヴォーチェというテクニックはない事に同意していますが、それもメッサ・ディ・ヴォーチェの意味が“声のポジション”である事を理解すれば決して不思議ではありませんね。

喉の正しいポジションを見つけて、それをキープする事ができれば、それはメッサ・ディ・ヴォーチェができることを意味するからです。

ではメッサ・ディ・ヴォーチェの練習の意義はなんなのでしょうか?

メッサ・ディ・ヴォーチェは、声(喉)の正しいポジションを作る事なしには、決してできるようになりません。

なのに練習曲の最初にこのテクニックが課題として科せられるのはどうしてだと思いますか?それは音をクレッシェンド、そしてデクレッシェンドする事、こうした練習を繰り返す事で、少しずつ声のポジションを安定させることができるようになるからです(もちろんそれと並行して正しい喉の下げ方や息の支え方を練習しないと効果が半減してしまいす。)。

練習曲の最初にメッサ・ディ・ヴォーチェという題名が付いている事で、これが一つのテクニックであるように定着していますが、実はこの練習曲を通して声のポジションもしくは声の置き方(メッサ・ディ・ヴォーチェ)を確立するのが本当目的なのです!

ジュゼッペ

なるほど!クレッシェンド、そしてデクレッシェンドしていく練習が、メッサ・ディ・ヴォーチェ(声の置き方、ポジション)を確立させるためと言う事ですね!

この練習は正確にやろうとするとかなり難しいので、その練習を通して、自分に足りない部分にすぐに気付かされます。スムーズに小さな声から大きな声までクレッシェンドができなければ、それは喉のポジションが安定していない事を意味しますし、途中で音がひっくり返ってしまったら、舌が邪魔している、もしくは息を支える筋肉が足りない事を教えてくれます。

メッサ・ディ・ヴォーチェの練習を繰り返すことで、そうした喉を下げるのに必要な筋肉や、呼吸を支えるのに必要な筋肉をコントロールしていくことを覚えていくことが出来るようになるのです。

おわりに

今回はメッサ・ディ・ヴォーチェについての話でした。

メッサ・ディ・ヴォーチェの練習は、その練習の意味を理解した上で正しく行えば非常に効果的な練習です。

ただ私達日本人は、初心者の内はたいていの場合喉の位置が高く、舌も奥の方に行ってしまう傾向にありますから、これらの癖がある程度取れてきた頃にメッサ・ディ・ヴォーチェの練習を取り入れたほうが効果が高いと思います。

自分が楽に歌える音域からメッサ・ディ・ヴォーチェの練習を初めて、徐々に音を高くしていくことで、歌う事に必要な筋肉、それからコントロールする力を付けることができますから、嫌がらずにぜひとも挑戦して欲しい練習ですね。

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