ドイツの歌劇場の舞台に立つまでの道のり!どうすれば本場の歌劇場の舞台に立てる?

みなさん、こんにちは。オペラ歌手を志す人達は、いったいどうすれば音楽の本場、ドイツの歌劇場の舞台に立つことができるでしょうか?

もちろん本人がある程度の実力を備えている事が前提となりますが、実力があっても行動を起こせなければ歌劇場の舞台までたどり着く事はできません。

今回はその行動面について、私の経験を交えながら話をしようと思います。

歌劇場のオーディションに呼んでもらうのが当面の目標

まず、歌劇場の舞台に立つ上では、とりあえず歌劇場のオーディションに行く必要があります。

自分の歌声を実際にそこの劇場の人に聴いてもらわない事にはそこから先には進めません。なので私達が取るべき行動は、歌劇場のオーディションに行けるように準備する事です。

しかしこのオーディションというのは残念ながら公募ではなく、招待制(合唱は公募あり)となっています。なのでオーディションに呼んでもらわなければなりません。現実はオーディションに呼んでもらうだけでも結構大変です。

オーディションに呼んでもらうためにはいくつかステップがありますからそれを紹介していきましょう!!

ステップ①:まずは履歴書と録音(録画)を用意!

そろそろオーディションを受けても良いな、と思ったらまず最初にやるべき事が履歴書自分の演奏を録音したデモテープやビデオを用意する事です。

ただ一言で履歴書といっても日本の履歴書のような薄っぺらなものではだめです。自分の経歴に加えて、これまで歌ったオペラのレパートリー、それからこれまでに歌った舞台などを相手の興味を引くように冊子にして書かなければなりません。だいたい4~8ページぐらいになると思います。

決して過小評価してはならないのがプロフィール写真(証明写真ではない)です。私は自分で撮影した写真を使用していましたが、できればプロにきちんと撮影してもらった方が良いですね。(たまに全身が写った写真を見たがる所もあります。)

そしてこのプロフィール写真も自分で良いと思った写真ではなくて、相手が良いと思うような写真を撮ってもらう必要があります。日本だと、ニッコリ笑顔で優しい印象の写真が好まれますが、ドイツでは笑顔ではなくて目力ばっちりの勝負顔みたいなのが好まれたりもします。

最終的には自分らしさが出ているもので良いと思いますが、日本風なプロフィール写真だと弱い印象を与えかねない点だけは頭に入れておいて良いと思います。

履歴書が用意出来たらそれと同時に送るデモ演奏が必要になります。郵送の場合はCDという事になると思いますが、最近はメールで送ってもらった方が良いという事も多いですから、自分のホームページや動画共有サイトにアップロードしたものをリンクするのが手っ取り早いですね。

デモ演奏のクオリティーは第1印象に大きく関わりますから、できるだけクオリティーの高いものを用意したほうが良いです。

ステップ2:音楽事務所(ZAV)のオーディションを受ける

履歴書と録音テープが準備できたら、まずはZAVと呼ばれるドイツの公的な音楽事務所のオーディションを受けてみましょう。

ZAVというのは日本でいうところのハローワークみたいなものですが、そこにも芸術部門(ZAV Künstlervermittlung)というのがあり、定期的にオーディションを行っています。

ZAVはケルン、ハンブルク、ライプツィヒ、ベルリン、シュトゥットガルト(合唱のみ)、ミュンヘンに支部がありますが、そこに直接電話をかけてオーディションの予約をとります。

音楽大学に在籍していると、大学に定期的に学生の歌を聴きに来てくれたりもしますね。

オーディションで良い印象を残すことに成功すると、そこに登録されて、歌劇場や小さなプロダクションで適切な役柄のオーディションがあると推薦してくれることになります。ZAVは推薦する時に歌劇場に送る履歴書が必要となりますから、登録されたらすぐに履歴書を送らなければなりません。

私も大分ZAVにはお世話になり、いろんな所のオーディションを紹介してもらいました。オーディションで役をもらえなかった事ももちろんありますが、最初に受けたキール歌劇場のオーディションでは小さいながらもソロの役をもらう事が出来ましたし、その後もハンブルク音大の「ドン・ショヴァンニ」にドン・ジョヴァンニ役で客演で出演したり、ヴェルニゲローデ音楽祭で行われた「チェネレントラ」にダンディーニ役で出演したりしました。

ステップ3:それ以外の音楽事務所のオーディションを受ける。

ZAVには大分助けてもらいましたが、ZAVが扱っているオーディションはたいていが若い人向けや、まだギャラがそれほど高くない役柄のものばかりになっています。

なので、それ以上の条件のオーディションを受けるためには、より力のある音楽事務所に登録してもらう必要があります。

音楽事務所はドイツ語でKünstleragenturと言います。この言葉でインターネット上で検索すれば、たくさんの音楽事務所の名前がヒットします。それぞれの音楽事務所のホームページをチェックしたら、メールアドレスや住所を調べて片っ端から履歴書と録音テープを送りましょう!中には郵送のみを受け付けている事務所もありますが、たいていはメールでOKです。

履歴書とテープを送る際には、オーディションで自分の声をぜひとも聴いてほしいという手紙文を添えたほうが無難です。とにかく録音を聴いてもらえるようにアピールしてみてください。

ほとんどのメールは無視されてしまいますが、録音が気に入ってもらえれば、たまに事務所のオーディションに呼んでもらえます。オーディションは基本的には無料ですが、ピアニストに伴奏代金として20ユーロ程度を支払う事が一般的です。中には部屋代と称してオーディションに50ユーロ以上お金をとるエージェントもいますが、そういう事務所は単なる金儲けであんまり良い所ではありません。でもそれは行ってみないとわからないですね。

基本的には事務所との間に専属契約というのはありませんから、できるだけ多くの事務所のオーディションを受けて、多くの事務所に登録してもらった方が良いです。登録されたからと言って、そのエージェントが積極的に働いてくれるかどうかの保証もありません。

事務所のオーディションで良い印象を残すことに成功すると、歌劇場の専属のオーディションや、客演のオーディションが紹介してもらえるようになります。事務所と歌劇場の繋がりが深いと、オーディションも有利になります。

番外編:エージェントを自分の公演に招待する。

音楽事務所に登録してもらう方法は、オーディションだけではありません。中にはオーディションをしない事務所も存在するからです。

もしドイツで音楽大学などの公演に出演する場合は、積極的に事務所の人を公演に招待してみましょう。そこで気に入ってもらって、後の仕事につながる事もあります。

現に私がラーデボイルの歌劇場の専属になった時のオーディションは、公演に招待した事務所からのものでした。

ステップ④:歌劇場に直接履歴書と録音を送る。

ドイツには、大小合わせて約60もの歌劇場があるとされていますが、直接歌劇場に履歴書を送ってみるという方法もあります。

こうした履歴書のほとんどは無視されてしまいますが、中にはちゃんとチェックしている劇場もあります。それはその劇場にいる上の人の方針次第ですから、特に決まりはありません。

特にあまり予算の大きくない小さな歌劇場では、仲介料が発生する音楽事務所との仕事を控えたがっていますので、こうした一か八かの履歴書提出が実を結ぶ可能性が比較的高くなります。

私はブレーメンの音楽大学を卒業した後で、小さな歌劇場を5つぐらい選んで直接履歴書とCDを送ってみました(その際願書と呼ばれる手紙を添えるのを忘れずに!願書には志望動機のようなものを書きます)。

そのうちの一つだったヒルデスハイムの歌劇場から、オーディションに招待され、オーディション後にプッチーニの「ラ・ボエーム」のマルチェッロ役をもらう事となりました。

さらに願書を出してから一年ぐらい経ってから、いきなりノルトハウゼンの歌劇場からもオーディションの招待が届きましたが、その時はラーデボイルの劇場に決まっていたので断りました。5つか6つぐらい願書を送ったうち2つの歌劇場から招待された事になりますから、この方法はかなり有効だと言えますね(小さい歌劇場に限定されますが・・)。

番外編:歌劇場の指揮者や歌手と直接知り合いになる

最後に番外編を一つ紹介します。

実はオーディションに招待してもらう方法として、内部の人間から推薦してもらう方法があります

その例としては、歌劇場の歌手やコレペティトーアに定期的にレッスンを受けるなど、個人的な知り合いになり、そこから推薦してもらうというものです。

推薦してもらうのが目的でレッスンに通うというのはお勧めできませんが、劇場の歌手やピアニストにレッスンを受けていて、実力を認められてオーディションに呼んでもらった歌手は少なくはないです。

私の同僚はドレスデン州立劇場(ゼンパーオーパー)のピアニストに定期的にレッスンを受けていましたが、3年から4年ぐらいたって、オーディションに呼ばれる事となりました。その結果ゼンパーオーパーと客演契約しています。

おわりに

今回はドイツの歌劇場のオーディションを受けるまでの道のりを紹介してみました。とにかくオーディションに招待されるところまではなんとかして頑張りたいところです。

そこまでくれば後は自分の力を出して歌いきるだけです。キャスティングというのは向こうが歌手に何を求めるかによって結果が変わってきます。

気に入られる事もあればダメな事もありますが、そこから先はあくまで向こうが決める事ですからあんまり気にしてもしょうがないですね。

まずはオーディションの舞台に立つ事を目指して頑張りましょう!


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