オペラ歌手になるにはどうすれば良いか?留学は必要?オペラ歌手までの道のり!

こんにちは。

私が初めて声楽のレッスンを受けたのは高校1年生になったばかりの頃でした。入学式の次の日に、ピアノを購入した楽器屋さんに行って歌の先生を紹介してもらい、その日のうちに先生に会いに行ったことを今でも覚えています。

そのとき先生に、「どうして歌を習いたいのか?」と質問されましたが、たぶん「オペラ歌手になりたいからです。」と答えたと思います。

でも正直に言ってその時、オペラ歌手とは何かも良く分かっていませんでした。単に、クラシックの歌い方を勉強すればオペラ歌手になれると思っていたんですね。

私のオペラ歌手としてのキャリアはそうして始まったわけですが、今回はどうすればオペラ歌手になれるのか、私の経験を踏まえながら話したいと思います。

オペラ歌手の定義は?

オペラ歌手とはいったい何なのかを定義するのは簡単なようで難しいですね。世の中にはフリーランスから歌劇場専属歌手までいろいろなオペラ歌手のスタイルがありますし、声楽教師としてレッスンしながらオペラ歌手として活動している人もいます。とりあえず話をすすめるために段階的に定義してみましょう。

ステージ① 実際に舞台の上でオペラの役を歌う!

まず、オペラ歌手としての最初のステージは実際に舞台の上に立ってオペラの役を一つ歌う事でしょう。私が最初のオペラの舞台に立ったのはシュトゥットガルト音楽大学のオペラ科による公演でした。その時の演目はロッシーニ作曲の「泥棒かささぎ」と「絹のはしご」という二つのオペラを組み合わせたものでしたが、私はジェルマーノという役を演じました。この時私は29歳でしたから、オペラデビューは随分遅かった方です・・。

舞台に立って一つの役を演じるという事は、オペラ歌手になるためにこれまでしてきた勉強がようやく形になったという事ですから、最初にオペラ歌手を名乗るならまずここではないかと思います。

ステージ② オペラ歌手として劇場と契約して収入を得る。

次のステージは実際にどこかの劇場や団体と契約して収入を得るという事ですね。これは実際にプロになったという証でもあります。ここまでくれば自他共に認めるオペラ歌手と言えるでしょう。

私が初めて歌劇場と契約したのは、ブレーメン芸術大学に在学していた2009年の事になります。オペラデビューから約1年後の事になります。その時は北ドイツのキール歌劇場で行われたヴァーグナーの「ニュルンベルクのマイスタージンガー」にコンラート・ナハティガルという役で出演しました。

ステージ③ オペラの収入だけで生計を立てる。

そしてその次のステージは、劇場や団体との契約数を増やし、それだけで生計を立てていくことですね。フリーランスとして、1年の間に複数の契約を結び、様々な舞台で歌う人もいますし、歌劇場とソリストとして専属契約する場合もあります。

実際には専属契約で数年歌った後で、フリーランスとして仕事をする人が多いでしょうか。

私は2012年にドレスデンの近郊のラーデボイルという街にあるザクセン国立劇場と専属契約を結び、「セビリアの理髪師」のフィガロ役でデビューする事となりました。

   

さて、ここまで話しましたのは、オペラ歌手になるにはどうすれば良いかを語るためですが、とりあえず今回はゴールをステージ③に定めて、それを実現させるためにはどのようなステップを踏んでいけば良いのか見てみましょう。

どうすればオペラ歌手になれるのか?

ステップ①先生をみつけて声楽の個人レッスンに通う。

オペラ歌手になるための最初のステップは声楽の個人レッスンに通う事ですね。声楽は決して独学では身に着ける事ができませんので、誰か先生を見つけてレッスンに通う必要があります。もしこれを読んでいる人がこれからオペラ歌手になりたいと思っているのでしたら、良い先生を見つけてレッスンに通う事から始めてみましょう!

冒頭にも書きましたが、私がこのステップを踏んだのは高校一年生の春の事になります。当時は阪神大震災に続いて地下鉄サリン事件が起こるなど、かなり衝撃的な一年でした。

ステップ②音楽大学等に入学する。

次のステップは決して必須ではありませんが、私は今の現状であれば音楽大学に行くことをお勧めしたいですね。声楽の技術を磨くだけなら、良い先生の所にレッスンに通うだけでも良いのですが、歌手になるためにはそれと同時に音楽的な事もたくさん経験しなければいけないんです。

この音楽的な経験というのは若いうちに沢山しておかなければなりません。これを沢山経験することによって、自分だったらこのような演奏がしたい、というイメージが出来上がります。誰だってイメージするのは簡単なように思いますが、そのイメージがめちゃくちゃなものだったら、いくら練習しても上達しません。

自分を導いてくれるのはいつだって自分が培ってきた音楽性なのです。

だから若いうちは、たくさん人前で演奏し、良い人の演奏を聴き、さらに友人たちと夜が明けるまで音楽について議論したりして音楽性を養う必要性があります。

日本でそういう環境が比較的簡単に手に入るのが音楽大学です。逆に言えば音楽大学でないとそのような環境を手に入れることは難しいです。

また大学では実際にオペラに参加する機会もありますので、早ければここで最初のオペラデビューを果たす事も不可能ではありません!

ステップ③ 外国に留学する

オペラ歌手のステージ②で書いたようにオペラ歌手として劇場や団体として契約するところまでなら日本にいてもなんとかなります。

ただステージ③にあるようにオペラ歌手として歌うだけで生計を立てたいと思うのであれば、日本を出ていく必要があります。というのも日本では劇場や公演回数が少なく、歌うだけで生計を立てていくのが非常に難しいからです。

私は歌劇場の専属だったころは、多い時で年間70公演、少ない時でも50公演はこなしていたと思いますが、日本ではそれだけの演奏会に出続けられるだけのシステムがほとんどないのがその理由の一つです。

一つのオペラのプロダクション(新演出)が出来上がるのにはだいたい2か月ぐらいの時間がかかります。なので、一人のオペラ歌手が一年間で参加できる新プロダクションは3つか4つが精一杯です。例えばドイツだと、一つのプロダクションごとに10から20公演ありますから、一年で簡単に50公演ぐらいになります。でも日本だとそこが2~4公演ぐらいと非常に少ないんです。8か月もかけて4つのプロダクションに参加したとしても、公演数が10公演ぐらいではなかなか元が取れるとは言えませんね。

なのでステージ③に進むためには現状では外国に出ていく必要があります。日本から外国にいきなりオーディションを受けに行っても良いんですが、まずは外国に行って個人レッスンを受けるなり学校に入るなり、まずは留学という形をとるのが良いステップだと思います。

私がドイツに留学したのは27歳になってからです。最初はシュトゥットガルトで語学学校に通いながら個人レッスンに通い、後にブレーメンの芸術大学で勉強しました。

ステップ④ 音楽事務所のオーディションに行く!

外国で歌や音楽、外国語の勉強をし、プロとして活動する準備が出来てきたと思ったら、今度はオーディションを受けに行く段階です。

例えばドイツの歌劇場では、欠員が出ても歌手を公募する事はほとんどないので、劇場のオーディションに招待されるには、その前に音楽事務所(エージェント)のオーディションに行く必要があります。

ドイツには本当にたくさんの音楽事務所がありますので、手あたり次第に願書と履歴書、そしてデモテープ(最近はCDよりもYoutubeのようなインターネット上の動画を好むところが多い。)を送ります。多くの音楽事務所からは無視されますが、時々オーディションに招待されますので、招待されたらオーディションに向かい、アリアを2,3曲聞いてもらうというわけです。

そこでうまく行けば、音楽事務所が歌劇場のオーディションを貰ってきてくれるというわけです!

私はブレーメン芸術大学に入って2年目から音楽事務所や歌劇場のオーディションに行き始めました。とにかく聴いてもらわないと先に進めませんから、準備ができたと思ったら行動あるのみです!

ステップ⑤歌劇場のオーディションに行く!

音楽事務所のオーディションを経て、歌劇場のオーディションまでたどり着いたら夢はもうすぐです!後は自分のもてる力を精一杯を出して、オーディションに合格すれば契約になります。オーディションの種類にはその役ごとの客員契約もありますし、シーズン通しての専属歌手の場合もあります。

ここまで来るのは中々長い道のりですが、だいたいこのようなステップを踏むことで、オペラ歌手のステージ②、ステージ③へと進むことができるようになるわけです。

おわりに

今回はオペラ歌手になるためにはどのようなステップを踏めば良いかについて書いてみました。もちろんこれ以外のステップでオペラ歌手になる事も決して不可能ではありませんが、これからもしオペラ歌手を目指したいと思う人の参考になれば嬉しいです。

もちろんオペラ歌手になるにはこうしたステップとは別に、歌手としての様々な資質も必要となるわけですが、それは別な機会にしましょう!


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