日本人が最も苦手とする外国語の発音①:Nの発音【声楽、オペラ】

こんにちは。私たちオペラ歌手は舞台の上では外国語で歌う事がほとんどですから、発音は非常に大事になりますね。

私もドイツ語、イタリア語、フランス語、英語と舞台の上では様々な言語で歌いましたが、その中でも本当に注意しなければならない発音がいくつかあります。

注意しなければならない発音というのは、たいていが日本語にはない発音になります。なので日本人が苦手とする外国語の発音として何回かに分けて取り上げてみたいと思います。

日本人はNの発音が苦手!

さて、私が最初の選んだ発音は子音Nの発音になります。実は日本人はこのNの発音がめちゃくちゃ苦手です。

ジュゼッペ

なんで(Nande?)?Nの子音は普通に日本語(Nihongo)にもあるじゃないですか?

その通りです。確かになにぬねので始まる言葉は日本語にもたくさんあります。

しかし今回はNで始まる言葉ではなくてNで終わる言葉の方をテーマにしたいと思います。早速ですがNで終わる言葉って日本語にあると思いますか?

ジュゼッペ

日本(Nihon)。それから他にも門(Mon)、本(Hon)、木炭(Mokutan)お母さん(Okasan)・・・たくさんありますよ。

そうですね。確かに日本語にもNで終わる言葉が沢山あるように見えます。実際にローマ字表記するとNで終わっていますしね。

でも実は、これらの言葉は一見Nで終わっているように見えるだけで、実際にはNの発音ではなくてNG【 ŋ 】として発音されているんです。

しかし外国語の言葉にはN[n]で終わる単語とNG[ŋ]で終わる単語が両方あります。我々日本人はこの二つの言葉をしっかり区別して発音しなければなりませんが、かなりの確率で、N [n] と発音すべきところををNG【 ŋ 】と発音してしまうんですね。理由は日本語にはN[n]で終わる言葉がないので、しっかり訓練しないと自分の耳ではなかなか聞き分けられないからなんです。

まずはNとNGの発音の違いから見ていきましょう。

N[n]とNG[ ŋ ]発音の仕方

Nの発音はどうやってすればよいでしょうか。答えは簡単です。Nを発音する時は、舌が上の歯全部と接触していなければなりません

エリザベス

なるほど(Naruhodo)!言われてみれば確かに、舌が上の歯全部と接触していますわ!

ではNGの方はどうでしょうか?NGの時は舌が上の歯に触れる事はありません。舌の後ろの部分が軟口蓋のあたりと接触しています。

エリザベス

ふーん(Hung)、そうなんですの。こちらも言われてみれば確かに舌の場所が違うかも しれませんわね。

NとNGの発音を区別する事自体は私たち日本人にとって決して難しいことではありません。しかしすでに書きましたが、我々日本人はついうっかり、Nで終わる単語をNではなくてNGと発音してしまう事が多いんです。

実例

ではいくつかの曲を例に挙げて実際に見てみましょう。ワーグナーのオペラ「ローエングリン」よりローエングリンのアリア「In fernem Land」の冒頭を取り上げてみます。ドイツのテノール、フランツ・フェルカーの録音リンクを張っておきますので、ぜひ歌詞を見ながら聴き比べてみてください。

 

In fernem Land, unnahbar euren Schritten,
liegt eine Burg, die Monsalvat genannt;
ein lichter Tempel stehet dort inmitten,
so kostbar, als auf Erden nichts bekannt;
drin ein Gefäß von wundertät’gem Segen
wird dort als höchstes Heiligtum bewacht:

 

太字で表した所は、すべてNで終わっていますが、これらはすべて[n]で発音されなければなりません。先に説明した通り、舌と上の歯すべてが接触していなければならないんです。そしてこれが日本人が歌うと、知らないうちにNからNG[ ŋ ]の発音に代わってしまう場合が多いんです・・・。

そしてその可能性は曲のテンポが速ければ早いほど高くなります。次はシューベルトの歌曲「Die Forelle:ます」の冒頭を見てみましょう。参考音源にはドイツのバリトン、フィッシャー・ディースカウを選びました。

In einem Bächlein helle da schoß in froher Eil,
Die launische Forelle vorüber wie ein Pfeil.Ich stand an dem Gestade und sah in süßer Ruh
Des muntern Fischleins Bade im klaren Bächlein zu.
Des muntern Fischleins Bade im klaren Bächlein zu.

こちらも太字にした部分はNG [ ŋ ] ではなくてしっかりとN[n]で発音されなければなりません。特にin、muntern、klarenなどは NG [ ŋ ] になってしまいがちですので注意しなければいけません。

ジュゼッペ

NG [ ŋ ] と発音するのはNG(ノーゴー)ってわけですね。

エリザベス

おやじギャグこそNGではないかしら・・・。

おわりに

今回は日本人が苦手な発音の第1回目としてNの発音を取り上げてみました。例としてドイツ語の曲をとり上げましたが、これはイタリア語でも英語でも同じです。語尾にNがでてきたら、とにかく要注意です!自分はきちんと発音できているかその都度確認する必要があります。

最初のうちはNとNGの違いを聞き取るのも難しいでしょうが、何度も練習するうちにだんだんその違いもはっきり聞き取れるようになってきます。何度も何度も練習してぜひとも習得してください!


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